「強すぎる構築はむしろ疑って、一つひとつ確かめていった」シニア世界準優勝メカジキ選手
[出典] Twitch
今年の「ポケモンワールドチャンピオンシップス(以降WCS)」シニアカテゴリで世界大会準優勝した、メカジキことワタユウキ選手。日本予選、世界大会のシニアカテゴリをどのように戦ったのか聞いてきました。マスターカテゴリとは違った環境への視点に注目です。
メカジキ選手ってどんな人?
— まず最初に、自己紹介をお願いします
2002年1月4日生まれ。愛知出身。趣味はアニメ鑑賞と、自宅で飼っている3匹のインコと戯れることです。中学1年の11月、「ORAS」で初めてポケモンを始めました。その次の年の2月にダブルバトルを触りました。今年の「ポケモンジャパンチャンピオンシップス(以降JCS)2016予選」を24位で通過し、東京・恵比寿で行われた全国大会でベスト4を獲得し、代表選手になりました。
調整は基本的に1人でやっていて、行き詰った時にTwitterなどを通して意見交換をしています。
読みが通用しないJCS予選
ー 「JCS予選」「JCSライブ大会」「WCS世界大会」を通して最も苦戦したのは
このWCSを通して最も苦戦したのはJCS予選です。マスターカテゴリのプレイヤーも混じった普段のレートで対戦を重ねていた頃と比べると、参加資格が特に必要ないJCS予選のシニアカテゴリでは、立ち回りや構築が甘いプレイヤーが多く、行動の読みが噛み合わないことがストレスでした。
環境トップメタにBig6(グラードン、ゼルネアス、メガガルーラ、メガボーマンダ、ドーブル、ファイアロー)を想定し、それに勝てるよう多くの時間を割いて調整していましたが、蓋を開けてみるとシニアカテゴリには全然いませんでした。当たるパーティはグラードン・イベルタルとか、グラードン・ホワイトキュレムの組み合わせでした。
僕が予選で使用したのは、レックウザ・カイオーガ・トゲキッス・マニューラ・ナットレイ・クロバットで、Sejun Parkさん(セジュン・パーク。2014年世界優勝者)が今年の冬に使っていたメンツです。オリジナルは「こだわりハチマキ」を持っていますが、僕の場合は「きあいのタスキ」を持って「つるぎのまい」でエースとして運用するなどして細部は変えてあります。「ねこだまし」マニューラや「このゆびとまれ」トゲキッスなどサポートが充実していることで、非常に立ち回りやすかったです。
JCSの構築
[出典] PGL
多分ゆうだちくんが自身のブログに構築の解説記事を公開したことがきっかけだと思うんですけど、シニアカテゴリではディアルガ・グラードンが多くて、マニューラの「いのちのたま」「けたぐり」が活躍しました。ただそれでもディアルガ入りは重くて、先発マニュオーガを投げ、ごり押しでディアルガを倒していましたね。
それでもドーブル入りに対してはトゲキッスクロバットを先発にして「ダークホール」を誘い、「マジックコート」でイージーウィンできるよう仕込みを施していました。「マジックコート」は、「ねこだまし」を受けるよりも早く使える補助技で、「ダークホール」や「ちょうはつ」などの変化技を跳ね返す効果を持っています。こうした戦術が功を奏し、JCS予選は24位でフィニッシュ。無事6月に東京で行われるライブ大会への出場権を獲得しました。
JCSライブ大会でも同様にオーガレックを使用し、TA(トラベルアワード。交通宿泊費免除プログラム)が貰えるベスト4に残りました。決勝へ駒を進めたゆうだち、ジェラールの2人はライブ大会前から知っていました。kazukiくんはライブ大会で初めて知り合いましたが、シニアカテゴリでは珍しくBig6を使用しているプレイヤーで興味を持っていました。
決められない構築
ー 世界大会の構築はどのようにして決めましたか
もともとは世界大会もオーガレックで挑むつもりだったんですけど、いつも相談に乗ってくれているあみけさんの「世界大会はグラゼルネを使った方がいい」というアドバイスに従って、グラゼルネを使用することにしました。
そこで、7月に入ってからはずっとBigB(グラードン・ゼルネアス・メガガルーラ・メガボーマンダ・ドーブル・ドータクン)を回していました。BigBというのは、さきほどのBig6をベースに、ゼルネアスやガルーラに強いドータクンを採用し、グラードンを「トリックルーム」下で運用するパーティです。マスターカテゴリのプレイヤーと調整を重ねていましたが、1ヵ月間集中して使い続けた結果、連戦連勝。驚くほど勝つことができました。しかし、あまりに強すぎるでのはと疑って、一つひとつ確かめていったところ、全国大会マスターカテゴリ優勝者のLiarさんが使用した「めざめるパワー氷」持ちゲンシグラードンにめちゃくちゃ重いことが判明し、世界大会へ持っていく自信がなくなってしまいました。
ここから構築の迷走が始まります。一時期なにが強いのか本当に分からなくなり、ゼルネアスはいらないんじゃないか。一般枠でいいんじゃないかと疑うようになりました。ゼルネアスを抜いて、マニューラを入れてみたりしていましたが・・・最終的にはテンプレートなパーティしかないと吹っ切れました。
世界大会1週間前にBigBからBig6へ変更しました。「Big6を使うことにしました」とあみけさんに伝えたところ、彼はBig6が好きですから、とても喜んだ様子でレーティングバトル28勝1敗の成績を残したBig6を渡してくれ、これを大会に持ち込むことにしました。ただし、この頃はガルーラでガルーラに「ねこだまし」をする人が増えてきていたので、『きもったま』だったものを『せいしんりょく』にだけ変更しました。
世界大会の構築
ー 世界大会はどうでしたか
世界大会の環境は、今度こそグラゼルネの「Big系」一辺倒だと思っていました。そしたらマスターカテゴリで優勝することになるWolfeが提供したオーガレックを持つBrendan(ブレンダン)がいたり、他に驚いたのが韓国のプレイヤーは4人いたんですけど、全員が構築と対戦相手の情報をシェアしていたんです。彼らが使っていたのはオーガレックで、一般枠にはクレセリア・モロバレル・霊獣ランドロス・メガクチートを採用していたんですけど、グラゼルネに対して投げる先発が「カゴのみ」持ちモロバレルと、「ラムのみ」持ちクレセリアなんです。ドーブルはガンメタされていて、昨年日本人が上位を独占したこともあって、強くマークされているなと感じました。
予選・トップカットをなんとか勝利し、決勝の相手はカーソン・コンファー選手。彼のパーティはグラカイドータで、見たときに絶望しました。勝てる望みがあまりに薄かったからです。もともと使うつもりだったオーガレックで対戦していたら確実に勝っていたと後悔しながら、僕のWCS2016は幕を閉じました。シニアカテゴリは決勝戦が唯一配信される対戦だったんですけど、このステージで大敗したことがとても悔しかったです。自分が弱いことをまじまじと見せつける羽目になってしまったと思っていて。
WCS2016世界大会シニアカテゴリ決勝戦 vsカーソン・コンファー
ー シニアカテゴリの配信はもっと増やした方がいいと思いますか
そうとは限らないです。僕の場合は、決勝だけ映る方が燃える。絶対に配信に映ってやろうと気持ちが入ります。逆に映りすぎると立ち回りの癖や、構築の内容がバレてしまうことを意識してしまってダメですね。
ー 今年のルールを振り返ってどうでしたか
なんとも言えないルールでした。ただでさえドーブルの『ムラっけ』や「ダークホール」で勝敗に運が絡みやすいうえに、伝説のポケモンが参入してることから火力がインフレしていて、1回1回の行動が勝敗に影響しやすく、「○○読みをさらに読んだ不毛な行動」が繰り返されたと思います。
今後について
ー 新作「サン/ムーン」に期待してることは
「でんじは」が消えることです。素早さが1/4になることはまだわかりますが、ランダムの痺れがほんとうにどうしようもない。
ー Big6を使う人にアドバイスをお願いします
Big6はあまりおすすめはしません。
Wolfeのオーガレックの方が強いと思います。というのも、オーガレックには一般ポケの数だけバリエーションがあるからです。「こだわりスカーフ」持ちカイオーガ入りのオーガレックがJCS予選の頃に流行りましたが、グラードンの交換読みをしないと負けてしまうので、初心者にはあまりお勧めできません。
ー 賞金7500ドルの使い道は
次回のコミケで全額使います。リゼロ(「Re:ゼロから始める異世界生活」)のエミリアに。僕が世界大会で着ていたのもエミリアのTシャツです。EMT(エミリアたんマジ天使)です。
ー あまり詳しくないですが、レムがかわいいと思っています
分かってないですねえ。エミリアが持つ淑女の気品にこそ惹かれるものがあるんです。
ー ・・・
ー 最後に世界準優勝をしての気持ちをお願いします
悔しいです。先ほども言いましたが、決勝に進出しておいて負けてしまうのは、ただただ弱さの証明になってしまうと思っていて。
僕は早生まれのため、来年もシニアで出場できます。今年の決勝の借りを返しに、来年はてっぺんを取れるよう頑張りたいと思います。
さいごに
7月の連勝に酔うことなく、常に疑問を持ち続けることにより、より良いパーティ選択をして準優勝を獲得したメカジキ選手。大会直前に受け取ったパーティも、環境に即した調整を施し、ひたすら思考し続けたプレイヤーでした。来年もシニアカテゴリでの出場とのことで、優勝への期待が高まります。
メカジキ選手、インタビューへのご協力ありがとうございました。
masa
2013と2015年に公式全国大会出場した人。
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