家でWCS2016観戦を楽しむ為の解説③-個体解説編

worlds-2016-announce-169

第三弾の今回は、構築・個体ランクを交えて、特に重要なポケモンについて技・持ち物構成等の解説を行い、詳しくは個体ランクの項で青字になっているポケモンは、VGC2016で非常に重要なポケモンなので解説を行います。(ドーブルに関しては第一弾の記事を御覧ください。)

目次

  • 構築ランクと個体ランクおよび解説
  • VGC2016において非常に重要なポケモンに関する解説
  • 最後に
  • 構築ランクと個体ランクおよび解説

    構築ランク

    対策すべき構築の優先順位です。


    S
    BIG-B、BIG6、及びその派生

    A
    グラカイドータ、その他グラゼルネ、レックゼルネ

    B
    グラレック グライベ

    C
    レックオーガ

    D
    その他

    SランクはVGC2016のトップメタと位置づけられるグラゼルネの2構築が入ります。詳しくは、こちらの第一弾記事で説明しています。

    次点と位置づけられるAランクには、第一弾の記事でもご紹介した通り、グラカイドータがまず入り、BIG-BやBIG6以外のグラゼルネも、その他の構築と比べて取れる決定的な戦術の数が多いことから入ります。最後にレックゼルネが入っているのは、仮にドータクン関連の戦術に対する回答を組み込めている場合は、相手のグラゼルネに対して非常に有利な構築であるという背景がありますので、使用者に対する期待も込めて入れさせていただきました。

    レックオーガは第二弾のクロバゲンガーの項で解説した通り、グラゼルネ側が柔軟な対応を取った場合、厳しい試合展開を強いられるということもありグラゼルネ、グラカイとの3強の一角扱いをされていた以前と比べては評価を落としています。

    個体ランク

    環境に存在する割合と個体としての強さを重視。


    S
    ドーブル、グラードン、ゼルネアス

    A
    ガルーラ、ボーマンダ、ドータクン

    B
    ファイアロー、カイオーガ(「こだわりスカーフ」を含む)、レックウザ

    C
    イベルタル、化身ボルトロス、ワタッコ、サンダー、クレセリア、モロバレル

    D
    クチート、クロバット、ゲンガー、エルフーン

    E
    その他

    基本的に、その強さが第一弾で言及されたポケモンがS~Bランクに入っております。

    化身ボルトロス

    シングルや全国ダブルにおいては、その悪行っぷりで知られる化身ボルトロスですが、「ねこだまし」が飛び交うこのルールにおいては「まもる」を所持する必要性が高く、それとメインウェポンの「10まんボルト」を所持することから、残りの2枠を「めざめるパワー水」や「めざめるパワー氷」、「ちょうはつ」、「でんじは」、そして「いばる」で争う事になり、柔軟に役割を遂行するだけの技スペースが足りません。また、ドーブルが「トリックガード」を所持していることから、補助技による妨害も確実に期待できるものではなく、上位9体よりは強さの面で劣ります。

    ゲンシカイキ

    グラードンがゼルネアスの相方としてカイオーガより選ばれやすい大きな要因として、ゼルネアスに強い鋼タイプに打点を持っているということが挙げられます。また、グラードンは2つのタイプを持つことから、カイオーガと比べて比較的天候に左右されにくく、特に物理型の場合は、天候に左右されることなくメインウェポンの「だんがいのつるぎ」を打つことができるので使いやすいです。この2つが合わさってグラードンの使用率がカイオーガと比べて上がり、またそれによって天候面でカイオーガにとっては辛い環境、グラードンにとっては苦労せず天候を取りやすいという状況が生まれているので、グラードンの方がチョイスされやすい状況が生まれています。

    次の章では、ドーブル以外の個体ランク上位9体の技構成などを解説します。

    VGC2016において非常に重要なポケモンに関する解説

    グラードン

    爆発力を考えれば特殊型の方が強いのですが、HPが削れてしまうと高打点複数技である「ふんか」が弱体化するという欠点があり、高度なプレイングを要求されると言えます。

    一方物理型は「だんがいのつるぎ」の不安定な命中率や、『いかく』に弱いというマイナス要素は抱えているものの、特にゼルネアスやカイオーガなど、特殊耐久の高い彼らへの切り返しとしては、物理攻撃であるが故に優秀であり、雨下であろうが高打点全体技のタイプ一致技が打てることもあって、比較的扱いやすいという側面があります。

    技構成

    特殊型は「ふんか」「だいちのちから」「まもる」に加え、相性的に不利なボーマンダに抜群を取れる「めざめるパワー氷」が基本ですが、それ以外としては「10まんボルト」や、もう一つの複数技として「だんがいのつるぎ」が採用されることがあります。基本的にはこれの最速個体を使うのが爆発力の関係上最も強く、最も警戒しないといけないのもこの個体です。

    物理型は「だんがいのつるぎ」「ほのおのパンチ」「いわなだれ」「まもる」が基本ですが、「いわなだれ」の枠は「ほえる」や「みがわり」、「つるぎのまい」、そして「ロックカット」に取って代わられることも多いです。

    特に「ロックカット」や「みがわり」は、BIG-B構築において「トリックルーム」最終ターンに、相手が両守るすることを読んで選択することでアドバンテージを得られ、「じゅうりょく」「だんがいのつるぎ」のギミックもあることから、「いわなだれ」の必要性が下がっているという事情があって急増しています。「ロックカット」のケースだと、メガマンダは抜けた方が良いことから、素早さは最遅というより95に設定されることも多いです。このように「トリックルーム」を使う構築では物理でSが遅い型が多いですが、グラカイではカイオーガだけを遅くしてグラードンは最速個体(特殊型もある)というケースもあります。

    ゼルネアス

    「サイコキネシス」や「くさむすび」などのサブウェポンを採用しても、大半のケースで「ムーンフォース」の方がダメージが大きいという背景もあって、技は「ムーンフォース」「マジカルシャイン」「ジオコントロール」「まもる」が原則です。

    配分は、相手のグラードンやカイオーガの特殊技より先に「ジオコントロール」を打てて、ミラー意識の強い臆病CS、あるいはメガゲンガーやメガレックウザの攻撃を意識して、多少Sを削った控えめHC基調のどちらかが選択されることが多いです(→配分例)。

    Cを下げるという選択は、「ジオコントロール」をした後に「ムーンフォース」などで倒せるポケモンの範囲が変わることから、Sを削る頻度に比べて、あまりなされません。

    ガルーラ

    特性『おやこあい』によって「きあいのタスキ」ドーブルを安全に倒してもらうという役割も担っていることから最速が基本で、残りの努力値は万が一相手のガルーラの「けたぐり」が飛んできても良いように、それを耐えるようにした後、残りをAに振ったものといった、全国ダブルでもよく見られた配分が用いられやすいです。

    技構成は、このVGC2016において脅威になるポケモンを複数体所持している方が有利になりやすいという背景から、「ノーマル技/グロウパンチ/ふいうち/ねこだましorまもる」というのが基本になり、全国ダブルほど「けたぐり」の使用率は高くありません。しかし時折、相手のドータクンやゲンガーを意識した「かみくだく」が使用されることもあります。

    特性は、ゴーストタイプに強い『きもったま』と、相手の「ねこだまし」を恐れずに行動できる『せいしんりょく』のどちらにも採用される可能性があります。

    ボーマンダ

    現在主流となっている技構成は「ハイパーボイス/すてみタックル/おいかぜ/まもる」であり、「りゅうせいぐん」の所持個体はあまり多くありません。「すてみタックル」は「ジオコントロール」後のゼルネアスやカイオーガなど、特殊攻撃でダメージを与えづらいポケモンに対して大きなダメージを与えられ、また相手の「ワイドガード」に引っかからない技としても採用されます。ゼルネアスに弱いことを逆手にとって「ジオコントロール」を誘い、「ほえる」や「みがわり」を使用する個体も存在します。

    努力値は「ハイパーボイス」で縛れる範囲をできるだけ広げるという点を考慮してCSがほとんどですが、「てだすけ」を入れている構築においては、「てだすけ」「すてみタックル」で相手のゼルネアスを倒せるようなAラインを確保する個体も存在します。

    性格は「むじゃき」か「せっかち」が多いですが、最近はお互いのボーマンダで「ハイパーボイス」を撃ちあうことも考慮して、せっかちを選ぶ人も多いです(無邪気だと「ハイパーボイス」2発で落とされてしまう)。

    ドータクン

    基本的に技構成と特性は、

    ①『たいねつ』「トリックルーム」「ジャイロボール」「じゅうりょく」「さいみんじゅつ」
    ②『ふゆう』「トリックルーム」「ジャイロボール」「スキルスワップ」「しんぴのまもり」

    の2種類が多いですが、時折「さいみんじゅつ」だけを搭載して、その他の技を搭載したりという個体もいます。

    ①の個体は、「だんがいのつるぎ」グラードンを擁するBIG-Bに多いです。「じゅうりょく」をすると『ふゆう』の効果が消えてしまうので『たいねつ』を選択しているという意味もありますが、相手のグラードンの炎技を耐えて、確実に「トリックルーム」を貼れるようになっています。②は「トリックルーム」下でカイオーガを運用するグラカイに多いです。

    持ち物は、相手の「ダークホール」や「さいみんじゅつ」に強く出れるように「ラムのみ」を選択することが最も多いです。

    以前であれば、努力値や性格は、HA勇敢に設定して相手のCSゼルネアスを一撃で倒せるようにしたものが主流でしたが、耐久に振ったゼルネが増えたことで「ジャイロボール」一発で倒すことができず、高いAを確保する必然性が下がったこと、グラゼルネ側がガルーラの「かみくだく」とゼルネアスのC+2「ムーンフォース」の集中でドータクンを倒す回答を用意するケースが出てきたので、HBD生意気といった、努力値を全て耐久に回すことで、「トリックルーム」を貼って補助役に徹することを優先した個体も増加しております。

    ファイアロー

    「トリックルーム」と「おいかぜ」の柔軟性の違い、耐久力の差や「さいみんじゅつ」が扱えることから、ドータクンよりは評価は抑えられますが、試合後半の縛りに使える優先度+1の「ブレイブバード」や「おいかぜ」などによる不利状況からの切り返し、あるいは晴れ状態でASガルーラを約9割削るような火力を持つ「フレアドライブ」、そして相手のファイアローやレックウザの先制技による縛りを解除できる「ファストガード」があることから。VGC2016においては依然トップクラスの評価を得ており、主にグラードンと同時に採用されます。

    技構成と持ち物は「ブレイブバード/フレアドライブ/おいかぜ/ファストガード @いのちのたま」で、ミラー意識や相手のマニューラ等より先に動くことを考慮した陽気AS個体が基本です。しかし「ファストガード」の枠を「まもる」にしたり、最近では「よこどり」を用いて相手の「おいかぜ」や「このゆびとまれ」、「ファストガード」、「ワイドガード」を奪ってしまおうというものも存在します。

    また、持ち物としてゼルネアス対策の「レッドカード」を採用するものもありますが、「レッドカード」はその持ち主が一撃で倒されると発動できないので、耐久に努力値を割いてゼルネアスのC+2「ムーンフォース」を耐えられるようになっています。

    カイオーガ

    ゲンシカイオーガ

    まずゲンシカイオーガについて解説します。

    技構成については、晴れになっても変わらず使用できる「れいとうビーム」と「まもる」は必ず採用され、残りの2枠を次の4つの技で争います。

    「しおふき」は命中100%の超高火力全体技ですが、カイオーガの素早さがあまり早く無いこともあって、威力が十分な状態で打ちにくいのがデメリットです。

    「こんげんのはどう」は「しおふき」と比べて、天候が晴れにならない限り、残りHPに関係なく連打できる全体技というのがメリットですが、命中が85%と低いのがデメリットです。しかし時折「じゅうりょく」「さいみんじゅつ」ドータクンと併用することで、そのデメリットを帳消しにするケースも見られます。

    「ねっとう」は「ワイドガード」に引っかからないこと、命中100%の水技であることからグラードンを処理する場合においては最も安全な技ですが、「こんげんのはどう」のダブルダメージより威力が低いので、火力面では不安が残ります。

    「かみなり」は、どうしても相手のカイオーガにパーティ単位で打点が持てない場合は採用しますが、基本的には役割が違った2つの水技を採用できた方が望ましいので、あまり採用されません。

    努力値や性格面においては元々物理耐久が無いことや、グラードンと比べて天候を取ることを重要視する必要があるという事情から、特に物理耐久を重視したものが多く、素早さを振ったものはあまりいないという印象を受けます。そもそもこれには、ゲンシカイオーガが最も採用される場合の構築がグラカイドータというのもあって、素早さが遅い個体を組み込みやすいという事情も関係しています。ただしレックオーガにおけるゲンシカイオーガは逆に最速個体が多く、しかし耐久も保障したいという考えを汲みとり、ほぼ臆病BSと言えるような個体を使用するケースもあります。

    スカーフカイオーガ

    スカーフカイオーガに関しては、第二弾のレックオーガの解説で、ほとんど説明しきっています。技構成は「しおふき」「こんげんのはどう」「れいとうビーム」「かみなり」が最も多く、努力値や性格は臆病や控えめでCSのものが殆どです。

    レックウザ

    優先度+2の「しんそく」を持つことが最も特徴的なポケモン。この技によって相手の優先度+1技より先に行動でき、また大半の「このゆびとまれ」や「いかりのこな」も無視して隣のポケモンに攻撃することができます。また、メガシンカ前の特性である『エアロック』は全ての天候系特性の頂点と言えるものなので、例として天候が重要視される試合では、他にメガシンカするポケモンが選出されていなくてもメガシンカしないこともあります。

    技・持ち物構成は小回りも意識して、「ガリョウテンセイ」「しんそく」「まもる」の、「きあいのタスキ」または「いのちのたま」持ちが基本で、配分はASがほとんど、下降補正がどこにかかるかは構築次第です。

    4つ目の技として考えられるものを4つ紹介します。

    まずは「たきのぼり」。グラードンメタです。火力補正が無いとグラードンを一発で倒すことはできません。

    つぎに「りゅうせいぐん」。このポケモンを弱体化させるボーマンダが出てきやすいことを逆手にとって採用されます。「いのちのたま」を持っていれば、グラードンを倒せることもあります。

    「オーバーヒート」は、鋼タイプへの打点が意識されています。

    最後に「つるぎのまい」。隙を見て使用することで、次ターン以降強力な縛り範囲を持つポケモンに変貌します。

    最後に

    VGC2016は全国ダブルと違って、これまで説明した通り一発一発の攻撃のダメージがデカく、「ダークホール」や「さいみんじゅつ」なども当たり前のようにあることで、それまで有利であっても一度のミスが命取りとなって逆転負けということになりやすいルールです。

    また、このルールと切っては切り離せないのが運要素です。具体的には、ドーブルの『ムラっけ』や「ダークホール」、「ジオコントロール」を積んだゼルネアスに「ふんか」や「しおふき」などを急所に当てること、「だいちのちから」持ち臆病CSグラの同速対決、そしてドータクンの素催眠(「じゅうりょく」の命中補助なしに「さいみんじゅつ」を使用すること)が挙げられます。

    実際に対戦するプレイヤーからしたらはっきり言って勘弁して欲しい要素ではありますが、観戦者からしたら結末が見えにくい、あるいはほぼ結末が見えていたが、運要素によって逆転したということが発生しやすく、ある意味観戦のしがいがあるルールだとは思います。

    終始ドーブルが対戦の命運を左右するところが、このルールの良いところでも、悪いところでもあります。自分の応援する人が厳しそうな状況に陥っても、もし『ムラっけ』ドーブルが生き残っていたら、それだけでまだ夢を見ることができます。諦めずに、最後の一挙一動まで目をそらさずにあげてください。僕の記事を読んだ人が少しでも、より楽しく、より熱心にWCSの観戦ができるのであれば、これ以上の幸せはありません。

    それでは、これまでの長文を読んでいただきありがとうございました!

    解説⓵
    解説⓶