家でWCS2016観戦を楽しむ為の解説①-VGC2016の前提知識編
[出典] pokemon.com
※編集注(’16/08/18) シングルバトルで対戦に慣れている人や、ダブルバトルに理解はあるものの、今年のルールにあまり手を付けていない人向けに、記事の加筆修正を行いました。
こんにちは、YTです。今週末はいよいよ「ポケモンワールドチャンピオンシップス2016」の世界大会が開催されますね。
「ポケモンワールドチャンピオンシップス2016」に採用されている対戦ルール(VGC2016と呼ばれます)は、普段のレーティングバトルで行われているダブルバトルとは違って、グラードンなどの伝説のポケモンを使用することができます。
そのために今回の環境は従来とは全く違ったものとなり、日ごろからこのルールの対戦シーンを追っていない方にとっては一体何が強いのか分からず、楽しんで観戦できないのではと考えました。少しでもより楽しく観戦する手助けになればと思い、筆をとらせていただいた次第です。
それでは本題に戻って、今日に至るまでのVGC2016の環境解説に移りたいと思います。トップメタなどの説明は、観戦レベルとしては今回のみで十分な内容となっているので、時間がない方は本記事だけ目を通してもらえれば結構です。
目次
VGC2016のドーブルと、そのメタの始まり
まずドーブルを取り上げます。このポケモンは言うまでも無く「ダークホール」(※1)という技で常に相手に圧力をかけ続けることが強みです。さらに特性『ムラっけ』(※2)を持つことによって、本来パワーが無くドーブルを長いターン放置し続けることを許しません。その他にも以下の強力なサポート技を所持しています。
※2 ターン終了時に、いずれかの能力が2段階上がり、別の能力が1段階下がる
技
ねこだまし
主に隣の強力なポケモンをサポートするために採用されます。「ねこだまし」+「はらだいこ」でおなじみ、全国ダブルのガルーラマリルリと同じイメージで考えていただいて問題ありません。
ワイドガード
味方のポケモンを全体攻撃技からまもる技、「ワイドガード」。「まもる」や「こらえる」と違い、連続で使用しても失敗することがありません。主にゼルネアスの「マジカルシャイン」、ゲンシグラードンの「ふんか」や「だんがいのつるぎ」、カイオーガの「しおふき」や「こんげんのはどう」といった、対戦を即終わらせかねない技を止めるための技として、高い採用率を誇ります。
トリックガード
味方のポケモンへの変化技を全て無効化するフェアリータイプの変化技。主に相手の「ダークホール」やドータクンの「さいみんじゅつ」を止める目的でよく採用されます。化身ボルトロスの「でんじは」、「ちょうはつ」「いばる」に頭を悩ませることもなくなります。
このゆびとまれ
「ねこだまし」と同様、隣のポケモンを守るのが目的ですが、「ちょうはつ」や「でんじは」の阻止に関しては「トリックガード」に軍配が上がることもあって、採用率は低下しています。
へんしん
主にゼルネアスを用いた構築において採用されます。最も大きな採用理由としては、グラカイと呼ばれる、ゲンシグラードンとゲンシカイオーガを擁するパーティ(合計種族値は2匹で1540!)を意識しています。グラカイの主な組み合わせとして、「トリックルーム」と「スキルスワップ」、「しんぴのまもり」を持つドータクンがあります。
ドータクンとゲンシカイオーガを並べているときに、相手はゲンシグラードンを繰り出し『おわりのだいち』で「つよいひでり」状態にすることで、ゲンシカイオーガの強力な水技を無効にすることができます。そこで、味方のゲンシカイオーガにドータクンが「スキルスワップ」を使用し、ゲンシカイオーガの特性『はじまりのうみ』をドータクンが受け取って発動することで、天候を再度「つよいあめ」状態に書き換え、相手のゲンシグラードンを水技で倒すことができるのです。
このドータクンとゲンシカイオーガの並びに対し、遅いドーブルとゲンシグラードンを並べ、味方のゲンシグラードンに対して「へんしん」をします。「トリックルーム」中の行動順は、ドータクン→ドーブル→ゲンシカイオーガまたはグラードンとなるので、ドータクンが「スキルスワップ」で書き換えた天候雨を「へんしん」でさらに取り返してしまいつつ、「へんしん」元の隣のグラードンの技でドータクンを処理できるのです。
「へんしん」は「まもる」を貫通して使用できるので、時折相手の両守る(※3)読みで、何らかの強力なポケモンに変身することもあります。
ニードルガード
普段の「まもる」と同じですが、本来はブリガロンやマラカッチなどごく少数の専用技で、直接攻撃をしてきた相手に最大HPの1/8のダメージを与えることができる技です。
持ち物
きあいのタスキ
持ち物は基本的に「きあいのタスキ」が最も多いです。この持ち物の強みは、
以上3つの理不尽な選択肢を相手に強いることができることです。
こだわりスカーフ
「こだわりスカーフ」を持つことで、相手のガルーラやドーブルが行動するよりも先に「ねこだまし」や「ダークホール」を使うことができます。
さらに、一旦後ろに下がった後に、後半でもう一度出てきて「ねこだまし」や「ダークホール」をチラつかせて両守るを誘いながら、「へんしん」をしてくるパターンもあります。安定性は「きあいのタスキ」よりは落ちますが、非常に強力です。
努力値
努力値については、相手の「トリックルーム」構築を対策する役割を期待している場合や、自身が「トリックルーム」を扱う場合は、HB252のS下降補正性格を選択。S個体値調整先としては、最遅クレセ-1の80、最遅グラ-1かつ『ムラっけ』素早さ2段階アップで最速ガルーラを抜ける84などが選ばれます。それ以外はとりあえず最速(残りの努力値はH振りではなく、B252が主流)だと考えておいてください。
全国ダブルにおいて、パーティ構築段階で想定していないといけない先発はエルフーン+テラキオンやガルーラ+マリルリなど、あまり多くありませんでした。しかしこのルールはドーブル絡みだけで5種類あります。そしてこれこそが、このルールにおけるパーティ構築や戦略を立てる事において最優先で対策すべき出発点です。ちゃんと対策していないと、この後に解説するようなことが起こるので、初手2体を出してから考えるのでは間に合いません。
代表的な組み合わせ
A. ドーブルゼルネアス
このルールにおける最強の並び。「ジオコントロール」を通してしまうと、その圧倒的素早さからあのガルーラですら1発で倒す「ムーンフォース」と、倒されないまでも7割弱削られてしまう「マジカルシャイン」によって場が壊滅させられてしまうので、後発で対処が取れない場合は「ジオコントロール」される前に倒さねばなりません。しかしドーブルの「ねこだまし」によってドーブル、ゼルネアスどっちも生き残り、かつ「ジオコントロール」も積めましたというケースが頻発します。
B. ドーブルグラードン
この場合グラードンは特殊型であって、最大威力の「ふんか」で大ダメージを与えるか、「ダークホール」を通されることを迫られます。後はミラー意識として、耐久無振りゲンシグラードン確定1発の「だいちのちから」と、メガボーマンダ対策で「めざめるパワー氷」を所持する個体が多いです。先日行われた日本の全国大会「ポケモンジャパンチャンピオンシップス2016ライブ大会」で優勝したグラードンレックウザは最も強力な並びなので、先発率も高いです。
C. ドーブルガルーラ
対策になる先発が出せなかったら「ダークホール」か「グロウパンチ」を通されます。「グロウパンチ」が通ると、次のターンに「ふいうち」での縛りによって片方が攻撃できず、ドーブルの「ダークホール」も通るケースが多いです。ドーブルへの「ちょうはつ」や、ガルーラへの「おにび」も「トリックガード」で無効にされます。2体とも禁止伝説では無いので、幅広いパーティタイプで取り入れる事ができます。
D. ドーブルボーマンダ
一見するとA~Cにくらべればマシですが、HB振りドーブルは『いかく』が入ったガルーラの「すてみタックル」を耐えてしまいます。
また、ボーマンダの「おいかぜ」によって、次のターンにドーブルが2倍の素早さで「ダークホール」を打ってきます。相手のゼルネアスが「ジオコントロール」をする前提で、ボーマンダの「ほえる」を使うプレイヤーすらいます。このように、このルールで最も多くの選択肢を誘発する先発です。また、Cと同じく2体とも禁止伝説ではないので、幅広いパーティタイプに取り入れることができます。
D#. ドーブルマンダの真の力
さらに質が悪いのが、ドータクンが入ってる構築です。ここまでの選択肢に加えて、ボーマンダをドータクンに交代、次のターンにドーブルによるサポートを受けながら「トリックルーム」をするのです。ドーブルが倒れた場合は、主にグラードンを出して「じゅうりょく」+「さいみんじゅつ」や「だんがいのつるぎ」、時おり「ふんか」で圧倒します。主にゼルネアスなどはグラードン+ドータクンで倒すので、最後にボーマンダを倒す手段の無い相手に対して、「ハイパーボイス」連打で試合をシメるという感じです。
ボーマンダではなくドーブルを交代させて、中盤以降ドーブルによるコントロールを可能にする選択肢もあるので、ほんとにロクでもありません。
E. ドーブルカイオーガ
これはレックオーガ(レックウザ+カイオーガ)にのみ見られ、カイオーガはゲンシカイキでなく「こだわりスカーフ」が主流です。序盤は特性『エアロック』をレックウザでゲンシグラードンに牽制をかけることで、「しおふき」を打ちやすい状況を作り、ドーブルとあわせて圧力をかけていきます。カイオーガの体力が削れたら一旦後ろに下がり、終盤に「こだわりスカーフ」+「こんげんのはどう」で場を制圧するというプレイングを取ります。
基本的に、グラードンがいないパーティには「しおふき」が通りやすい以上あまり苦労することはなく、パーティの残りのポケモンは主にグラードンやゼルネアスを意識したものが採用されることが多いです。
また、ドーブルが絡んでいなくても対策必須の先発が存在するのでそれも記しておきます。
F. グラードンファイアロー
特殊グラードンと、「フレアドライブ」を持ったアロー(「いのちのたま」持ちが多い。)で、一気にダメージレースで優位に立っていく先発で、ドーブル、カイオーガ、レックウザがいずれも入っていないと非常に止めにくいです。全国ダブルをしたことがある人なら、「おいかぜ」のあるリザードンヒードランのようなものと考えていただいて構いません。
ボーマンダは比較的この先発に対抗できるとされていますが、特殊グラードンのめざ氷所持率の増加により、その評価も怪しいものとなっています。
G. ガルーラゼルネアス
基本的にドーブルゼルネアスの亜種と考えていただいて構いません。ドーブルのように多彩なサポートはガルーラにはできませんが、「グロウパンチ」からの制圧という固有の強みを持つことにより、ゼルネアスだけを狙うことを許しません。
ここまでの記述を踏まえると、グラゼルネ(グラードンゼルネアス)と呼ばれるパーティタイプが、いくつもの対策必須の戦略を所持していることから、トップメタであることがうかがえます。その中でも、次の紹介する2つの構築が、グラゼルネの中では重要構築とされています。
世界大会における上位3つの構築
BIG-B(ビッグ・ビー)
[使用者]ベテ [成績]PJCS2016予選27位など [mobile]
[/mobile]
ガルーラ、ボーマンダ、グラードン、ゼルネアス、ドーブル、ドータクンの組み合わせ。構築者であるベテ氏の名を冠して「ベテパ」と呼ばれることも。選出は、先発ボーマンダドーブル、後発ドータクングラードンなど。
扱う戦術 : A、C、D、D#(稀にB)、G
先発だけでなく、後発にも対策必須の並びがあることから、完全な対策をすることは非常に困難とされており、現時点で最も警戒する必要のある構築となっています。
ゼルネアス構築に対して、現行で多い立ち回りは次の通りです。
① ボーマンダドーブル初手
② ボーマンダ→ドータクンに交代、運が良ければ「ダークホール」が通る
③ 「トリックルーム」+ドーブルをグラードンに交代か、適当にドーブルが倒れてグラードンを死に出し
④ 「じゅうりょく」+「さいみんじゅつ」、「だんがいのつるぎ」(稀に「ふんか」)で一気に殴る
⑤ 「トリックルーム」解除後、ゼルネアスを失って対抗策が無い相手を、ボーマンダの「ハイパーボイス」連打でシメ
あまりに有名な立ち回りなので世界大会ではまた違ったものが見られると思いますが、ちゃんと対策をしていなければこの動きにそのまま負けてしまいます。
BIG6(ビッグ・シックス)
[使用者]MDK [成績]PJCS2016予選4位 [mobile]
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[使用者]MDK [成績]日本全国大会ベスト8 [mobile]
[/mobile]
ガルーラ、ボーマンダ、グラードン、ゼルネアス、ドーブル、ファイアローの組み合わせ。
扱う戦術 : A、B(特殊のみ)、C、D、F、G
名前だけは聞いたことがある人が多いでしょうか。BIG-Bと比べると、ドータクンの不在によって相手のゼルネアスの「ジオコントロール」を展開された場合の切り返しには不安が残りますが、グラードンファイアローの選出が可能である点を含めて、爆発力には長けています。グラードンも比較的素早さが遅いものを採用せざるを得ないBIG-Bと比べて、速い個体を採用しやすく、初動における強さは全構築トップです。
また見た目から判断しにくい初見殺し要素を組み込みやすく、例としてトリルドーブルが組み込まれている構築が全国大会でも結果を残しています。実際ドータ入りの構築に対しての対抗策を考えると、この構築ですら遅いドーブルが組み込まれる事が最近は増えています。
これに対して現在対抗構築として最有力とされているのが以下の構築になります。
グラカイドータ
グラードン、カイオーガ、ドータクン +主に「ガルーラ、ボーマンダ、化身ボルトロス、ドーブル、クレセリア」から3枠
まずこれに組み込まれるドータクンは、BIG-Bのそれと違って、「しんぴのまもり」+「スキルスワップ」+「ラムのみ」持ちの『ふゆう』個体が多いです。これによって「トリックルーム」中にカイオーガが、ドータクンの「さいみんじゅつ」で止められることを防ぎ、また天候も安全に取りつつ、ドータクンが相手のグラードンに倒されにくいものとなっています。
また、化身ボルトロスは「めざめるパワー水」を持つことで、相手のグラードンを倒せるようになっているものが非常に多く、特にグラカイミラーでは優位に立つための手段の1つとなっています。
もしグラカイドータ構築にボーマンダが入っている場合、グラゼルネ使用者としては「トリックルーム」中の相手のカイオーガに対して制圧されないことを考えつつ、終盤のボーマンダに対して切り返せる手段を用意しなければなりません。またドーブルが入っている場合は、それに関連する戦術に対抗できるものを用意する必要があり、非常に困難なものとなっているので、グラゼルネに対するメタとして最も優秀とされています。
まとめと次回予告
個人的に、今回の世界大会はグラゼルネとグラカイで7割以上の使用率を占めるだろうと考えています。仮にBIG6、BIG-B、グラカイドータを全て完璧にメタった構築が現れたなら、一躍して優勝候補筆頭に躍り出るでしょう。
次回以降は、
・レックオーガやBIG-C(クレセ入りグラゼルネ)、グラレック(日本全国大会の優勝構築)など、その他有力構築の紹介
・クロバゲンガーやグラードンワタッコなど、この記事で取り上げられなかった並びの紹介
・構築、個体ランキングをあわせて、有力ポケモンに関する説明
などを解説していきたいなと思います。いわば発展的内容にはなりますが、情報量は世界大会出場者が最低限準備しうる範囲のみに絞っておりますので、最後までお付き合いいただけると幸いです。よろしくお願いします。
WCSを観戦する時に、あわせて読んでおくといい記事
YT
京都大学ポケモンサークル所属。カマルオフスタッフ。トップメタを使ったミラーゲームをすることを避け、それを独創的なアイデアで対策することで勝利を重ねるスタイルを取っている。趣味はスポーツ観戦。WCS2015Day2、バトルロードグロリア2015日本一決定戦出場。
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