スマブラコミュニティで独自に発展した”宅オフ”文化に迫る
めがね/Megane│2017.2.3
ゲームに対する取り組み方は三者三様だ。
友人と楽しむ者もいればオンラインで実力を付ける者もいる。そんななか、オフラインで最も盛んな”宅オフ”という言葉を聞いたことがあるだろうか?スマブラプレイヤーなら馴染み深い言葉だが、そうでない人には恐らく異色な文化とも言える。今回はスマブラコミュニティで独自に発展した”宅オフ”という文化に焦点を当てあるオフ会を取材した。
宅オフとは
宅オフとは文字通り「自宅でのオフ会」のことである。
Twitterを主に家主が募集をかけ、参加者は実際に家まで行きプレイをする。
通常オフ会と言われれば、どこかの施設、飲食店、ゲームコミュニティでいえばゲームセンターなどを想像する方が多数だろう。決してオンライン文化が廃れているわけではない。スマブラDXにはネトデラがあり、最新作スマブラforWiiUではオンラインが実装されているなか、何故彼らはオフラインにこだわるのだろうか。
2016年某日
ある日の午後、筆者はあるプレイヤーと待ち合わせをしていた。
あるプレイヤーとはそう、VGBC|aMSaである。日本初のプロプレイヤーとして2014年、VGBootCamp(通称:VGBC)とスポンサー契約を交えた。普段はあまり宅オフを開くことがない彼だが、今回は特別にお邪魔させていただいた。
「今日は他に誰か来るんですか?」
「あとは名無しさんとイイさんかなあ。」
顔なじみとなってしまえばなんということはないが、初対面のプレイヤーと数多く接する機会があるのがオフラインならではの緊張感だ。
参加者に必要なものは「コントローラー」そして「家主や他の参加者に対する礼儀」。宅オフという文化は家主の好意で成り立っているということを忘れてはならない。
家に着くなり、そこにいたのはイイ氏、名無し氏2人のプレイヤーだ。挨拶もそこそこに早速皆でスマッシュブラザーズをプレイしはじめた。
プライベートな空間となるため全容はあまりお見せできないが、部屋には数多くのモニターが並んでいる。複数の参加者にも対応できるよう、宅オフが開かれる家にはモニターが複数台あることがほとんどだ。
「今さらだけど、こういった宅オフって初心者が参加しても大丈夫なんですか?」
「募集しているところは基本的に新規歓迎なので、Twitterとかで気軽に「初めてなんですが!」と声をかけてみるといいと思います。オフ会っていうと固いイメージかもしれませんけれど、ただ友達の家に遊びに行くような感覚ですね。」
友達の家に遊びにいくような感覚とはまさにその通りで、宅オフで遊ばれるのが何もスマブラだけとは限らない。
「色々やりますね。マリオパーティとかマリオカートとか。スプラトゥーンなど他のゲームもプレイするし。」
”スマブラをプレイする”という目的で集まってはいるが、コアゲーマーたちとゲーム機が揃えばスマブラだけに留まるはずがないのだ。
「でも、どうして今時オフラインなんでしょうね。」
「オンラインは相手の顔もプレイも見えないしあまり印象に残らないですよね。でも、オフラインなら印象に残る。人もプレイも見えていますし。」
「やっぱり対面でやることに大きな意義があると思います?」
「相手の顔が見えるとゲームのキャラクターを通じた対話とリアルでの対話の両方できるのが一番ですね。だからすぐにお互い成長できるし仲良くなれます。」
「いつかスマブラ5神が『ゲームのプレイに本人の性格が現れる。』って言ってましたよね。他にも何かメリットはありますか?」
「日本中、いや世界中に宿ができる(笑)」
「確かに。すごく現実的なメリットだ(笑)」
大会に参加するプレイヤーが遠征するとなれば必ず出てくるのが”宿問題”だが、スマッシュコミュニティはこの問題を宅オフという形で解決している。関東のプレイヤーが関西に遠征したら関西プレイヤーの家へ、逆に関西のプレイヤーが関東に来た際は関東のプレイヤーが宿を提供する。この文化は国内のみならず海外でも盛んであり、海外へ遠征したプレイヤーが現地の家にホームステイということも珍しくない。
「でも実際、初対面の人の家に行くってなかなかハードル高いですよね。危ないなって声が聞こえてきそう。」
「そうかもしれないけれど、オフに来るような人はみな少なからず対戦相手が欲しくて来ている。メリットを求めてきているのに問題を起こそうなんて人はいないよね。それに、何か問題がおきたらコミュニティ内ですぐ共有される。不安な面もあるかもしれないけれど、今は皆のマナーの良さで成り立っています。」
「確かにその通りですね。宅オフに来ている人たちってどんな目的できていると思います?」
「自分は、もっと強くなりたいと考えている人が多いのかなって思ってました。でも、先に述べた友達の家感覚で遊びに行く人もいますし、新しい人との出会いを求める人もいます。目的はどうであれ自分の好きなゲームを同じくらい好きでプレイしている人たちと一緒に遊びたいという気持ちが根底にありそうですね。少なくとも自分はそうです。」
ゲームをしながら話をしていると時刻はすっかり夕方になっていた。
「何か飯でも食べに行こうか。」
宅オフ参加者は時に寝食を共にすることも珍しくない。「ゲームをする」という目的で集まったものの、いつしかゲームは集まるための口実にもなっていた。
ここまで読んでいただいた時、もしあなたがスマブラ64のオフ会に参加してみたいならTwitterで検索してみるといいだろう。スマブラDXに興味があるならTwitterで「#スマブラDX_オフ会」で検索してみるといい。そして、スマブラforWiiUのオフに参加したいなら「スマブラ4宅オフbot@takuoff_ssb4」をフォローすると良いだろう。数多くの実力者たちがあなたを歓迎してくれしだろうし、もしかすれば才能を見出してくれるかもしれない。
「最後に、もし宅オフの参加に戸惑っている人がいたらなんて声をかけたいですか?」
「うーん…」
「その宅オフがキッカケに、世界中の人と友達になれるかもしれませんよ。」
ゲームに対する取り組み方は三者三様だ。
友人と楽しむ者もいればオンラインで実力を付ける者もいる。宅オフとなればハードルは高いかもしれない。しかし、高いハードルは越したぶんだけ得るものも大きい。”ただゲームをするだけの間柄”から今では”友人”へとなったコミュニティの仲間たちは、この宅オフ文化の一番の賜物かもしれない。
取材協力
VGBC|aMSa@aMSaRedyoshi
イイ(Mr.II)@ssb4_Mr_II
名無し(NNS!)@GreenSamus
めると@melt_ryota
めがね/Megane
スマブラDXプレイヤー。ビジョンキャンセルが得意。
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