Wolfe、オーガレックの新境地 – 構築作成の流れ –
photo by @masavampharos
グラードンとゼルネアス一辺倒の大会になるだろうと散々残念がられた前評判を見事覆し、カイオーガ・レックウザを伝説枠に据えたライチュウ構築が鮮やかに優勝を飾った、「ポケモンワールドチャンピオンシップス2016」世界大会。今回優勝した構築がどのようにして生まれたかを、Wolfe選手(@WolfeyGlick)と共同で構築を作り、世界大会ベスト4を獲得したMarkus Stadter(マーカス・スタッダー)選手(@13yoshi37)に訊きました。
名誉を取り戻す
2015年夏、世界中のダブルバトルプレイヤーにとって、年に一度の晴れ舞台である世界大会は、上位8名の決勝トーナメントに、7人の日本人プレイヤーが進出した。唯一残ったドイツ人プレイヤー、Lajos(ラジョ)への声援もむなしく、最終的に上位7つを日本人が独占した。
Wolfe Glick(ウォルフ・グリック)は2012年に世界大会準優勝を経験して以降、いまいちピリッとした成績を残せずにいた。今年7月の頭に行われたアメリカの全国大会でも、Wolfeが使った構築は散々なものだった。
今年はなんとしても世界大会で結果を残さなくてはならない。そこでWolfeは私Markusとチームを組み、優勝するための構築の制作に着手することにした。
世界大会で意識すべき5つの構築
私達が世界大会で戦うことになるであろうパーティに想定したのは、Big6(メガガルーラ、メガボーマンダ、ゲンシグラードン、ゼルネアス、ドーブル、ファイアロー)、BigB(ファイアロー→ドータクン)、BigC(ファイアロー→クレセリア)、グラカイ、ゼルネレックの5つ。
Wolfeは、カイオーガ・ドータクン・メガゲンガーの組み合わせが、グラードン・ゼルネアスの構築に対して強いことに気付いており、この3匹を構築の軸に設定することとした。
もう一つの伝説枠にWolfeはゼルネアスを採用していたが、私はゼルネアスよりもレックウザの方がグラカイに強いと感じていたため、レックウザを使用するよう伝えた。
残りの課題としては、化身ボルトロス対策と、Big系統への勝利をより強固にすること。
そのために採用したのは、ライチュウとカポエラーだった。
ライチュウは特性『ひらいしん』により、化身ボルトロスを封じ込めることに長けている。このルールのボルトロスは「いばる」を採用する技スペースがないことが追い風となった。
「ほっぺすりすり」はカイオーガの上を取って大きなダメージを与えてくるメガボーマンダ、メガガルーラ相手に使用する。
「ボルトチェンジ」と「ねこだまし」はサポートとして有用で、「ボルトチェンジ」でレックウザへ交代しながら、カイオーガが撃つ「しおふき」は非常に強力だった。
カポエラーの『いかく』と「ねこだまし」はBig系統へ非常に刺さる。「ワイドガード」はカイオーガと合わせてグラードンを攻撃するために使用。「フェイント」とメガゲンガーの「ヘドロばくだん」で、様子見をしてくる多くのドーブルを倒すことに成功した。
また、「だっしゅつボタン」は都合のいい並びを作るのに便利だった。
ドータクンの役割を改めて洗い出しておくと、ゼルネアスを攻撃すること、「トリックルーム」+「スキルスワップ」+ゲンシカイオーガでBig系統へ非常に強い駒を作り出すこと。
「しんぴのまもり」と「ラムのみ」を採用することで、「ダークホール」ドーブルやモロバレルに困ることの無いようにした。
天候雨中の『ふゆう』ドータクンを倒す手段は限られており、「トリックルーム」下でカイオーガを運用するパーティの起動役としては、これ以上ないほど適任だった。このようにして、世界大会の約1か月前に6匹を決定。調整試合にはBrendan Zheng(ブレンダン・ズン)が加わった。
仲間のサポート
Brendanはシニアカテゴリのプレイヤーで、今回の世界大会でVGCの解説を務めたAaron Zheng(アーロン・ズン)の弟である。2013年のジュニアカテゴリ世界王者であり、その実力はシニアの域には到底収まらない。今回は、アメリカ全国大会でWolfeと話をしていたことがきっかけで、調整の手伝いをしてくれることとなった。
彼は、元々ゲンシカイオーガに入っていた「かみなり」を「しおふき」に変更するように提言してくれた。『ひらいしん』ライチュウと『エアロック』レックウザを採用したこのパーティでは、「かみなり」との相性が悪いと考えたのだ。
この変更は確かに的を射たものだった。相手のカイオーガは少し重くなってしまったが、そのことよりも、高い威力と安定した命中率を持つタイプ一致技を持つことができたことの方が大きかった。
このパーティは、カポエラーやライチュウの「ねこだまし」など、カイオーガを無傷で動かすことのできる手段を複数持ち合わせていることから、「しおふき」と相性がいい。
余談だが、Brendanはエピソードデルタを終わらせていなかったため、世界大会ではレックウザをメガシンカさせることができないトラブルがあった。それでも世界ベスト8という結果を残したという話は、どれほどこの構築選択が優れていたかを如実に語っている。
構築
実数値は、時が来たらWolfeが公開する。それまでは非公開にして欲しいとのことだった。
ゲンシカイオーガ
しおふき こんげんのはどう れいとうビーム まもる @あいいろのたま / あめふらし→はじまりのうみ
性格:ひかえめ
メガレックウザ
ガリョウテンセイ しんそく つるぎのまい まもる @きあいのタスキ / エアロック→デルタストリーム
性格:ようき
ライチュウ
ねこだまし ほっぺすりすり がむしゃら ボルトチェンジ @とつげきチョッキ / ひらいしん
性格:おくびょう
カポエラー
ねこだまし フェイント ワイドガード インファイト @だっしゅつボタン / いかく
性格:いじっぱり
ドータクン
ジャイロボール トリックルーム スキルスワップ しんぴのまもり @ラムのみ / ふゆう
性格:なまいき
メガゲンガー
ヘドロばくだん まもる おにび ちょうはつ @ゲンガナイト / ふゆう
性格:おくびょう
来季に向けて
また、この構築をBilla(Baris Ackos/バリス・アコス)がこっそりパクって使用したところ、これまたマスターカテゴリベスト8に輝いた。これによって、このオーガレックを使ったプレイヤーが世界大会優勝、ベスト4、ベスト8を獲得した。
Billaはあと1勝してベスト4に、Brendanは優勝したかったと語っているが、この構築を使った4人全員が世界ベスト8以内に入ったことから、ひとまずは今回の結果に大変満足している。
来期にあたるVCG2017では、再びヨーロッパ大会のコメンテイターをするかもしれないし、南北アメリカで開催される大会にも足を運んでみたい。もしかしたら、アジアで開催される大会にも参加できるかもしれない。
いよいよ発売まで3か月を切った「ポケットモンスター サン/ムーン」に、はたしてどのようなシステムが実装されているのか、待ち遠しくて仕方がない。
関連動画
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masa
2013と2015年に公式全国大会出場した人。
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