【コラム】ゲームに接続される「私」――ポケモンGOを出発点に

果恵│2016.7.23

【ゲーム×学問】ゲームを人文学的観点から考察！ゲームに接続される「私」

　ついに昨日（2016年7月22日）、日本版ポケモンGOがサービスを開始しましたね。全国各所で大きな反響を呼び、ニュースでも取り上げられ、読者のみなさんも今日までで何度もお目にかかったのではないでしょうか。

　私のまわりの人もたくさんの方が既にプレイされていて、Twitterでの話題はポケモン一色です。イーブイがとってもかわいい！

　はじめましての方は、はじめまして！私はライターの果恵（かのえ）と申します。

　今回は、昨日リリースされたポケモンGO、また、同時に新しいゲームの技術（厳密に言えば異なりますが）であるVRなど、まだまだ発展を見せるゲームのテクノロジーによって変容していくゲームによって、プレイヤーである私たちはどのように影響されていくのか？という疑問について、人文学的、主にメディア論などを中心とした考察を、簡単にしていきたいと思います。

メディア論とは？――機械と人間の接続

　ポケモンGOはどんなゲーム？と言われれば、ざっくり言えば「現実世界を歩き回って、ポケモンを捕まえに行く」といったところでしょうか。事前のプロモーション映像と、公式サイトにもある、開発者からのメッセージをご覧いただければ、ゲームの趣旨や方向性を想像しやすいかと思います。

公式プロモーション映像

開発者からのメッセージ映像

基本的に「ポケモンGO」のモデルは原作となる「ポケットモンスター」シリーズで、その世界観を現実の世界にも起こしてみた！という感じ。私の印象としても、ゲームの世界がスマートフォンを通してそのままリアルな世界に反映された、というものがありました。

ゲームの中だけで成立し得たフィクションが、スマートフォンの画面越しに映る現実世界に意味を上乗せして私たちの前に立ち現れる。夢に見た「ポケモンマスター」に自分がなるという体験をもたらしてくれる、今までのゲームの追体験とは異なる、新しいタイプのゲームだなと強く思いました。

メディア論とは？

　「メディア論」とは、その言葉の通り「メディア」について様々な観点から考察を行う人文学系の学問です。ここでの「メディア」とは、いわゆるテレビ・新聞・インターネットなど、報道や情報発信を行う機関だけを指すものではなく、すべてのコミュニケーションにかかわる媒介物の全般を取り扱う学問です。

具体的には、人と人がコミュニケーションを取る際に最も必要な言語、また身振り、手ぶりなどもメディアとなり得ますし、また人と物との間に発生するコミュニケーションにおいても、たとえば文字、ポスター、レストランのメニューや友達と一緒に撮影した写真も、メディアの分析対象としてあげられます。

　この話題をゲームで考えるのであれば、たとえば主人公たちのグラフィックやマップ、カーソル、また内容だけでなく、コントローラーやそのボタン、ハードの外箱などもメディアとして認識し、分析することが可能です。

ちなみに、ゲームを題材にした人文学的な議論は、記号学、美学、哲学などの領域でたびたび行われています。ゲームを人文学の観点から考察することは、今わたしたちが持っている思想のパターンはなにに影響を受けているのかを理解することができたり、それによって普段の生活の中で出てくる「なぜ、そうなのか？」といった疑問を考えるうえで重要なヒントを与えてくれるものなのです。

機械と人間の接続

　1900年代を代表するメディア研究者であるマーシャル・マクルーハンは、メディアは人間の身体を拡張するものであるという議論から、「人間はメディアによってつくり変えられる」という主張をしています。槍や斧などの武器は人間の爪としての機能を拡張させた姿であり、そこからテクノロジーが発達した現在に生まれたもの――車は足による移動を、電話は言語によるコミュニケーションを、ハードディスクは記憶能力を拡張させたものである、というものです。

そして、私たちは普段生活の中でそういった数多のメディアを駆使しています。当然、すでに私たちの生活に様々なメディアが必需品であることは明らかです。それは、私たちの感覚が、私たちが作り出したメディアによって作り変えられている、ということもできるかと思います。